□母胎□

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□母胎□

200X年。10月9日。 風が強い。 制服のスカートが太ももにまとわりついてきた。 錆びた金網が風でガチャガチャ揺れている。 ここは、とある廃屋の屋上。 彼女がお気に入りとしていた場所だった。 「これで、楽になれるね…」 彼女はうっとりした表情を浮かべて金網を乗り越えた。 彼女に躊躇はない。 「誰も助けてくれないなら…私が私を助けてあげるの…」 濁った世界に用などない。 ありがちな不幸少女の… ありがちな終わり方… 彼女は、そう思いながら風に身を任せた。 ††††††††† 温かい羊水から、冷たい場所へ… あの温かい場所へは二度と戻れない… 二番目の聖母は祈った。 『私達に安らかな死を…』 聖母の祈りが届く時…そこに子の幸せは存在するのか? 少なくとも、大人は子どもに優しくはない。子どもはそんな大人にならなくてはいけない。 矛盾だらけのこの世界に、子らは産み落とされた。 【神】の名による断罪は、果たしてこの世界に何をもたらしてくれるのだろうか…?
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