□母胎□

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††††††††† 「何故、何故うまくいかないっ!?」 けたたましい音を立ててあらゆる物が散乱していく。 試験管…ビーカー… よく解らない数式や図の書き込まれた書類… 苦悶の表情を浮かべて、頭をかきむしるのは、白衣の男性。 彼の背後に並んだ大きめの試験管たちの中身が、彼をあざ笑うようにして溶けていく。 「…あいつと、同じ事が出来れば、…」 そう独り言を呟いた瞬間、部屋の電話が鳴った。 それは、彼が一度は願った絶好の機会を告げるものだった。 「完璧な素体?外も中身もほとんど無傷?」 だんだん、口角が上がってくるのを感じる。 自分の望んだ以上のことが出来る。 そんな自信でいっぱいになったからだった。 「僕はあいつとは違う。僕は僕の意志で神に触れてやる…」 彼は愚かだ。 そう簡単に神に触れることは出来ない。 出来たとしたなら、それは神の真理の末端の一部である。 それでも彼はそれを求めるのだろう。 彼が睨み付けた先に、何があるというのか。 ††††††††† □母胎□ □完□
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