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「悟、お前さぁ俺とバンドやってみない?」
そう淳が突然切り出してきた。
「え?俺が?」
「うん、2人とも音楽好きだし、お前ギターやってるだろ。俺もドラムの教室に通ってるしさ。前に最後の思い出作りたいって言ってたじゃん?うちのクラスの奴も誘ってさぁ、やってみようぜ。」
クラスの委員長をしているだけあって、その実行力の速さにはいつも驚かされる。
「じゃあ、やってみるか。どうせやるなら思いっきり楽しみたいもんな」
「そうそう。メンバー集めの方は俺に任せてくれ。」
淳のツテでメンバーはすぐに集まった。
ボーカルはバスケ部の和樹、ベースはハンド部で学年1モテる慎ちゃんだった。
「じゃあ、みんながそろった所で確認したいんだけど。」
放課後、メンバーを教室に集めた淳が話し出した。
「今度の学祭が俺たちにとって最後じゃん?毎年やっているから分かると思うけれど、一般公開しているロックフェスティバルに俺たちも参加しようと思って、今回バンドを作った訳さ。でもそれに出る為には、5月に開かれる観客が審査員のオーディションに受からなくちゃいけなくてさ。今年は出演数多いから結構厳しいみたいよ。」
オーディョンって何だよって思った。プロになるわけじゃあるまいし。
でも、最後だから気合入れて頑張ろうって思ったんだ。
「へぇ~、面白そうだね。みんなバンド組むんだぁ。」
どこで聞いていたのか、同じクラスの美奈ちゃんが話に入ってきた。
「あれ、お前いつからいたの?」
「あんたのでかい声は廊下を歩いていても十分聞こえるの。だから大体分かるわ」
淳と美奈ちゃんは同じクラス委員。お互い気を使わない話のやりとりは、外から見ればいいカップルって感じ。僕は羨ましかった。
「ねぇ、あんたたち何演奏するの?あたしスピッツやって欲しいなぁ。」
「俺たちの中であんな高い声出る奴はいねぇよ。そうだなぁ、みんな何がいい?」
「俺、オフスプリングやりたいなぁ。」と、バスケ部の和樹が応えた。
オフスプリング?知らない。洋楽は全然聴かないからなぁ。
「今、CD持ってからみんなに聴かせてやるよ。」
「ALL I WANT」を初めて耳にした時は、体がぞくっとした。みんなも同じだったらしく、即決定。
これともう1曲を選んで、僕たちはいよいよライブに向けて動き始めたんだ。
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