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「……ここか」
事件のあった場所は路地に入って、すぐにわかった。
心ない馬鹿が、スプレーで壁に落書きなどされ、枯れた花束などが置かれた一角。
竜太郎は大きくため息しながら、買った花束を備え、手を合わせた。
「……ん?」
美那香がいつもの様に路地を歩いてると、見知らぬ男が手を合わせていた。
髪は男性にしたら長く、結構背は高く、メガネをしていた。
Tシャツにジーパンにスニーカーと普通の格好だった。
「あの、真理の知り合いですか?」
ふいに声をかけられ、驚き振り返ると、女の子が後ろにいた。
「あっ…いや……その」
「貴方も人喰いピエロに犠牲になった、真理を笑いにきたの?」
「ちっ、違うよ…そのちょっとね……被害にあった子に花を……」
肩くらいまでの髪に、整った顔立ちをしているが、目は少し釣り上がっており、気が強そうに見えた。
服装は夏休みだろうに私立の高校の制服姿だった。
「……ふん」
美那香は竜太郎の脇に立つとゆっくり手を合わせ、そのまま無視してまた路地を引き返して行った。
ここの路地は迷路の様になっているが、駅前など近道にもなっている。
美那香は最近よく路地でうろうろしており、ルートは熟知しているが、竜太郎みたくあまり路地を利用しない者にはただの迷路である。
竜太郎はため息をつき、そろそろ帰ろうか考えていると、コツコツと誰かが歩いてる靴の音に気がついた。
音のする方向を見ると、さっき友人達やネットで見た、人喰いピエロの容姿そっくりだった。
天辺は禿げ、太っており、上半身は裸でドクロのペイント。
上に汚れたロングコートを着ており、下も汚れたズボン姿だった。
顔は本当に薄汚れたピエロメイクだった。
男は竜太郎に気がつくと、ゆっくりロングコートから、30センチ以上の長い包丁が右手に握られて出てきた。
「……うわぁマジでかよ」
「うひひ…ひっひひ」
正直、恐怖で動けなくなってしまった。
人喰いピエロはゆっくり、右足を引きずりながら、近づいてくる。
竜太郎は逃げたかったが、足はガクガク震えるだけで動けなかった。
「見つけた!!」
いつの間にか戻って来ていた、美那香が大声と共に、人喰いピエロに向かって石を投げつけた。
竜太郎はその瞬間、人喰いピエロの脇をすり抜け、美那香の手を取ると走ってその場から逃げた。
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