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「……で?あなたのおかげで私はチャンスを失ったんですよ?」
「…………はい」
路地から無理矢理美那香を連れ、彼が入ったのはファミレスだった。
「私はあいつにもう少しで復讐できたのに……。あなたが邪魔してくれたおかげであいつは逃げただろうし、今日もまた無駄に過ごしたわ」
「いや……本当にごめん。身の危険を感じたし……危ないからさ」
あの時、美那香の投げた石は、人喰いピエロの目に当たったり、目潰しされた状況だった。
チャンスだと思って、人喰いピエロに向かって走り出した時、いきなり体を持ち上げられ、そのまま人喰いピエロとは反対方向に進み、仇のあいつは遠ざかって行った。
必死に抵抗するも、まったく通用せず、ようやく止まった時には路地から出てすぐのファミレスだった。
そこに入ってから約20分間、ずっと竜太郎は美那香の文句を黙って聞いてた。
「はぁ……とりあえずもういいわ。あなたの奢りでいいわよね?」
「えっ……マジで?」
「いやなの?」
「…わかりました」
美那香は満面の笑みを浮かべながら、メニュー表を見た。
竜太郎も同じくメニュー表を見る。
「あっ自己紹介まだただったよね?私は鈴木美那香。高校三年生よ」
「僕は久坂竜太郎。大学二年。よろしくね」
そこからは美那香のリードもあり、二人いろいろと話しをした。
互いの好きな事など他愛もない話や、自分の事など。
そして、今回の事と人喰いピエロの事も。
「……ねぇ竜太郎はあいつの考えてる事わかる?」
「いや、わからないけど、だいたい予想はつくよ」
「例えば?」
「性癖かカニバリズムか……まぁどちらにせよ僕にはわからないね」
「……そか」
「鈴木さんはどうしてあいつを追ってるの?」
「私は……目の前であいつに真理を殺されたの」
美那香はうつ向きながら話しを続けた。
「竜太郎は……親友が目の前であんな奴に襲われたらどうする?助けられる? 私は無理だった……ただ怯える親友の顔を見てただけだった」
美那香の瞳には泣きたくもないのに、涙がどんどん出てきた。
今日初めて会ったばかりの、竜太郎に今まで溜め込んできた全てを話してしまった。
罪悪感にかられて自殺しようとした事や、あいつを追ってていろいろ危ない目に合った事。
全てを竜太郎にぶつけてしまった。
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