告発メール

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 七月も近いある日、白金台駅から南に歩いて二十分程のところにある小夜子たちの住む二階建ての家の外は、桜の葉がまぶしい日を浴びて木々がキラキラと輝いていた。講義を終え、買い物を済ませて家に帰ってきた小夜子は、ご飯を炊く準備を済ませると、家の電話の留守番機能を解除し、自分の部屋へ向かう。  ボブヘアを抑えるピンを外した小夜子は、ゼミで出された宿題の一つに取り掛かっていた。小夜子にはキャスターになる夢があり、三年生になってからでは準備が大変と少しずつ準備を始めている。小夜子が取り組んでいる宿題は小論文だが、教授がかなりハイレベルな要求をしてくるので、毎回悪戦苦闘している。  そこへチャイムが鳴り、 「ただいまぁ。お父さんから伝言入ってる?」  と制服姿のかおりが帰ってきた。 「お帰り、遅かったじゃない」  小夜子は階段を下りてくると、 「お父さんならもう少しで帰ってくるって。さ、今日は野菜のカレー作ろう」  と言った。 「わかった」  かおりは自分の部屋に入っていくと制服からクリーム色のカットソーとジーパンに着替え、ノートパソコンを立ち上げる。 「おっとっと、その前にメールチェック、メールチェック」 「こら、かおり、メールは後でも見られるでしょ」  小夜子がかおりの部屋に入っていくと、 「体罰先生だって!?」  とかおりが驚きの声をあげていた。 「どうしたの?」 「お姉ちゃん、あすかからメールだけどひどい話よ。とにかくメール見てよ」  かおりに引っ張られるようにして奥へ入った小夜子は、パソコンのメーラー画面にくぎ付けになった。 かおりへ 私は今大けがをして学校をしばらく休んでいるの。  その原因は私の通う青龍学園高校の先生の体罰。特に生活指導担当で昨年から入ってきた相原という先生が一番ひどい。  相原は私が入っている合気道部の顧問で体育教師なんだけど、こいつが起こした体罰事件をPTAや私たちが追及しても、金のバラまきなどでもみ消されて、私たちは泣き寝入りさせられているの。  私の後輩にも、ノイローゼになって練習に来られなくなってしまった子がいるの。お願い!おじさんにこの事を話して! 浅倉あすか 「体罰教師か。ひどいわね」  小夜子は静かに言った。 「青龍学園って言ったら文武両道の学校で有名みたいだけど、こんなことがあるなんて思わなかった」
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