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かおりの言葉にうなずく小夜子は、少し不安そうな表情を見せた。自分の通っている道場の後輩が、学校でひどい目に遭っているとは想像も出来なかったのである。カレーを作ることに集中しながらも、どうしたら後輩を助けてあげられるだろうとじっと考え込んでしまった小夜子であった。
それから一時間ほどしてチャイムが鳴った。
「はーい」
小夜子がドアホンに出ると、モニターに哲夫・竜治・一郎がそろって映っていた。
「食事中だったらごめんね。大丈夫かな?」
哲夫がドア越しに呼びかける。
「どうぞ」
小夜子がゆっくりドアを開けると、哲夫に続いて竜治と一郎もリビングに入ってきた。竜治は、
「お、なんだかいいにおいするな」
とにやりとする。一郎は、
「おいおい、いくら三人そろってお腹がすいてるからって…もう!」
と苦笑いした後、
「ところで誠、用件というのは何だい?」
と聞いた。
「ああ、ちょっと聞いてもらいたいことがあってな。かおり、説明しなさい」
誠が言うとかおりが、
「私も一時間半前に帰ってきたんだけど、いつものようにメールチェックしていたら、こんなメールが届いていたの」
かおりはそう言って件のメールを三人に見せた。それを見て、
「なんだって、体罰事件か」
「ひどい話だぜ。全く」
と一郎と竜治がぼやく。
「子供たちのことを一体なんだと思ってるんだ。子供を傷つける体罰なんて教育じゃない!可哀そうじゃないか」
哲夫も思わず激高する。
「で、どうしてあすかちゃんの学校の事件が表ざたにならないで生徒たちが泣き寝入りさせられているのか、俺はそれがなんとなく気になっているんだ。ひょっとしたら何か裏があると思ってな」
誠が言った。
「なるほど、それで俺たちの出番ってわけか」
竜治がうなずくと、誠は
「そうなんだ。警察だけで動くことも出来なくはないけど、この話今のところ被害届が出ていないから、皆にも力を貸してほしいんだよ」
と答えた。
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