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「そうなると誠、その生活指導の相原と言う男だけじゃなくて、他の人間も調べたほうがよさそうだな」
「ひょっとするとマスコミにたたかれるの恐れて裏工作って可能性もあるぜ。青龍学園は東京でも結構有名らしいけど、こんなことがマスコミに出たら大騒ぎだろうからな」
一郎と竜治が言った。そこへ、
「二人とも鋭いじゃないか。俺も同感だ」
と哲夫が静かに割り込んだ。
「おそらく良心的な先生もいるんだろうけど、クビを恐れて身動きが取れなくなっている。だから生徒たちも親も抗議できないんだろうな。ひょっとするととんでもないことになるぞ。俺の勘ではどす黒い金が動いている気がする」
「他にもろくでもない先公がいたりしてね」
かおりも言った。
「黒木さん、どうする?あすかちゃんは私が通っている道場の後輩でもあるし、かおりの友達だから何とか助けてあげたいんだけど」
小夜子が聞くと、
「もちろんだ。まずは彼女に話を聞いてみよう」
と哲夫は言った。そして、
「俺の先生も稽古は厳しかったし、たまには叩かれたけど、怪我するほどひどいのはなかったな。もし体罰に武道を使ってるとしたら俺は絶対許せない」
と続けた。哲夫は父が空手の先生だった影響で幼いころから空手や柔道を中心に様々な武道をたくさんの人に教わってきたが、それゆえに技をかけられた時の痛みをよく知っているのだ。
「そうね、本当にひどいわ」
小夜子もあすかがどんなふうにけがをさせられたかを考え、胸が締め付けられる思いだった。
次の日、小夜子とかおりは、誠と一緒にあすかの家を訪ねた。
「こんにちは」
小夜子とかおりが声をかけると、
「かおり…小夜子先輩…お久しぶりです」
とショートカットのくりくりした目を持つ少女が、松葉杖をついて現れた。が、うっと顔をしかめて倒れこむ。
「あすか、いったいどうしたの」
小夜子が駆け寄ると、
「先輩、息するのも痛い」
とあすかが息を切らしながら言った。よく見ると右手にはギブスが付いており、右足も湿布がたくさん貼られている。
「ひどいケガじゃない。どうしたのよ」
小夜子は思わず絶句した。
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