九_2

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「ソーなんです! 凄いんです! 世界の坂本、セ・カ・イ・のU・ta・da! 時代を超えた、このスーパーコラボレーション。いやー素晴らしいじゃありませんか! うーん。ブラボー!」  パーソナリティーはウタダの「タ」だけを高く発音した。音程でいえば「ド」から「ソ」へ飛んでひとつ下の「シ」に着地したような感じだった。  このワザとらしさ。うん、間違いないアレの声だ。と彼女は思う。そのフレーズだけは、誰でも物まねができる。(名前はなんだっけ?)顔まで思い浮かぶのに名前が出てこない。  彼女は少し悔しかった。コレに限らず、知っているのに思い出せない事が、日常的に頻繁にあるのだ。そういう事がある度に(自分は頭が悪い)彼女はそう思ってしまうのだ。でも。実際、そのパーソナリティーの名前を思い出したところで、何の役に立つわけでもない。  (とにかく、コイツは「ソーなんです」なんだ)   そうしておいて話の内容のほうに気を移すことにした。
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