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コレは復讐だ。正義など微塵もない。そんなものの必要も感じない。藍毅はゆっくりと息を吸い始める。音を立てずに。こういう時、力みは全てを大なしにする。深い呼吸を緩やかに繰り返し、彼は体中の力を可能な限り抜いていく。目的に近づくのに必要な歩く力以外の全てを。
スニーカーを履いているとき、彼は足音を立てない。それは彼の子供の頃からの特技だった。何の訓練をしたわけでもない。そっと歩く。それだけで自然にそうなるのだ。昔その特技が活きたのは「缶蹴り」遊びくらいのものだったが、まさか、それが彼の現在の行動にこれほど適した才能になるとは、偶然とは時折、奇跡に変化するものである。
一歩、また一歩。藍毅は目的に近づいて行く。相手は二人連れ。まったくこういう手合いはいつでも二人以上で行動する。それは連中にとって本能的な行動システムとなっている。今はカラーギャングと言うらしい。ずっと昔、彼が子供の頃にも、こういう類の連中は決まって二人以上で歩いていたものだ。不良とか愚連隊とかいう連中だ。
変わらないな。と藍毅は思う。変わらないものは研究し、解明しやすい。
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