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頬を突き破った針はそのまま舌も刺した。
当然、俺は声にならない悲鳴をあげた。
痛みよりも恐怖のほうが大きい。
俺は光悦に浸るオッサンを突き飛ばして家まで夢中に走った。
不思議なもので、普段はウザくてしかたがない親も、今は会いたくてしかたがない。
いっちょ前に糞生意気な言葉を吐き捨ていたのだけど、いざとなれば真っ先に頼ろうとしたのは親だった。
全速力で走る俺を呼び止めようとする通行人たち。それもそうだ。泣きじゃくりながら口から大量の血をだしながら走っているのだから。
しかし俺にはそんな言葉を耳に入れる余裕はなかった。
家に到着し、駆け込むが誰もいない。
頼りにしていた親がいないことに激しく落胆したけど、今はそれどころではない。
泣きながら警察に電話をすると全ての戸締まりをして、警官が行くまで傷口を布で抑えとくように指示された。
電話を切り、そこで俺は気がついた。
なんで、誰もいないのに家の鍵が開いているんだ…
振り返ると
オッサンがいた。
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