もう一つの幼馴染

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店の中に怒声が響いた。 本を読んでた客もびっくりして、本を戻し、店内から去っていった。 「お前バイトのくせに嘗めたバンダナつけやがって! ああっ!?」 男の激情は止まらない。 俺はお菓子コーナーから立ち上がり急いでレジエリア内の真利奈の隣に戻った。 「すみません…… 止めてください!」 「バイトなんだから外せや! つけるならまともに仕事できるようになってからにしろや!」 俺の前で男は手を伸ばし、真利奈の前髪についてるバンダナに手を伸ばて掴んでいた。 真利奈は仕事を忘れてその男を外そうと必死だった。 「お客様おやめください!」 「うっせー! ろくに仕事できん奴が嘗めた恰好しとるのが許せんのじゃ!」 「やめて、やめて~! バンダナだけは外さないで!」 マネージャーや事務室にいる二人が来てくれれば大丈夫なんだが…… どうせ雑談してモニターなんて見てないに決まってる。 俺は仲裁を止めて、マルボロのボックスを後ろの陳列から取る。 「お客様こちらが商品になります、頼まれたものは用意しました。 それでも暴力を振るうなら警察に突き出しますよ!」 「なんだと!? お前は横からうっせえんだよ!」 俺はそいつに突如殴られた。 間にテーブルを挟んでいたおかげで至近距離からではなかったが、少し痛かった。 「翔! お客様! 警察に通報致します!」 真利奈はレジ隣の非常電話に手をかけた。 「やめろ! このアマが!」 「キャッ……」」 男が伸ばした手が真利奈のバンダナを掴んだ。 その衝撃でバンダナが取れて、床に落ちてしまった。 俺と男は動きが止まった。 真利奈がバンダナをしていた部分に火傷の跡がついていたから。 しかもかなり酷い。 「みっ…見ないで!」 真利奈はレジから離れ、フロアとの境を越え、店内から出てってしまった。 「お客様困ります!」 ようやく騒ぎに気付いた、おばさんと先輩がバイト服を着たまま事務室から出て来る。 「うるせー! そんなことしるかー!」 男はタバコも持って帰らずに店内から逃げるように去っていった。 「翔、気付くの遅くて悪かった…… 大丈夫だったか?」 「はいっ、大丈夫です…… しかし真利奈が出て行きました……」 「チッ…… 厄介なことを。 翔。 一部始終を俺達に教えるんだ」 「分かりました……」
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