もう一つの幼馴染

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「火傷のことがどうした? それがそんなに辛いことか?」 「普通の人には分からないさ! この傷の重みは!」 俺も真利奈の横のブランコに腰をかけた。 真利奈は相変わらず額を手で隠していた。 「傷……見せてみろって」 「嫌さ! 馬鹿じゃないの!?」 「いいから! 幼なじみの俺に対しても隠し事するのか!?」 「嫌って言ってるでしょ!」 真利奈は俯き涙を流した。 この傷は何を背負っているのだろう? 「そうか…… なら何も言わない。 でもな、お前が抜け出したことで二人がバイトを代わりにやってんだぜ?」 「知らないさ……」 真利奈はそう吐き捨てるように呟いた。 「知らないって何だ!? 迷惑かけてるの分からないのか!?」 「あのねぇ…… 普段から教室で騒いで、迷惑かけてるあんただけには言われたくないさ! それとも何!? この傷を見て馬鹿にしたいの!? 恥をかかせたいの!?」 真利奈はブランコから立ち上がり、両手を広げて、俺を問い詰めるように訴えた。 その時、彼女の傷が俺には見えた。 誰がこんな傷を真利奈に…… 俺の中で怒りが巻き起こる。 「別に全然恥じゃない。 むしろその傷を背負ってでも生きようとするお前を尊敬するさ」 「尊敬……? 何が尊敬よ! この傷見てみなさいよ! どう見ても恥さ……」 「よく見せてみろ」 俺も立ち上がり、真利奈に近づく。 「やめて! 近寄らないで!」 「こんな傷くらい…… 何でもねえじゃねーか!」 俺は真利奈の前髪を上げて見た。 酷いことしやがる…… 誰かしらないけど。 「おかしいわよ…… バンダナで隠して生きてきたけど…… 絶対にそのうち周りにばれるさ。 そしたら私もう学校にいけないさ!」 真利奈は泣き崩れるかのように地面に座った。 彼女がこれではかわいそうだ…… 「ほらっ、バンダナ! 持ってきたぜ!」 俺は彼女の目の前にバンダナを差し出す。 「持ってきたんさ……?」 「隠したいなら隠せばいい、でも俺の前だけは隠さないでほしい」 「翔。 ありがとう……」 彼女は俺の手をとり、しばらく泣いた。 気丈に振る舞う彼女に、俺は見てはいけないものを見た気がした。
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