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 その日は朝から家中バタバタしていた。 お母さんは、 「カメラのバッテリーどこに置いたかしら。」 なんて言いながら走り回ってるし、お父さんは 「今日、行けなくてごめんな。夜は皆で食事に行こうな」 とお姉ちゃんに声をかけながら急いで出掛けてしまった。 私は眠い目をこすりながらパジャマのまま食卓につき目の前に置かれていたパンをかじる。向かい側ではいつもは寝坊してばかりいるお姉ちゃんが涼しい顔をして紅茶をのんでいた。 「お姉ちゃん、おはよう。」 「おはよう、結衣。」 立ち上がりながらお姉ちゃんはお母さんに声をかける。 「お母さん、私、先に行くから。」 お母さんは片手にカメラを反対の手にテープを持ちながらお姉ちゃんの後に続いて玄関へ出た。 「お母さんも結衣を連れてすぐ行くからね」 私もバナナをかじりながら玄関へでた。 「あんまり急がなくていいよ。」 お姉ちゃんは靴をはくためにかがんで背を向けながら言う。 「気をつけてね。」 立ち上がったお姉ちゃんにカバンを渡してお母さんはなんだかうれしそうだ。 「はーい。じゃあ、行ってきます。」 お姉ちゃんはバナナをかじる私の頭をポンっとたたいてから出かけて行った。 「本当に、大きくなったわ。」 お母さんはしまった扉を見ながらつぶやいた。 そういえば、最近お母さんとお姉ちゃんはパッタリケンカをしなくなった。 前までは、しんろ がどうしたこうしたとケンカばかりしていたのに。 二週間前に、なんとか大学 に 合格してお祝いしてから二人がケンカする姿を見ていない。 きっと一生分のケンカを全てしてしまったに違いない。
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