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その晩は、ヒトミの宣言通り、豪華なおかずが並びました。
わたしの好物の「お刺身」もありました。
『お母さんの分は、ちゃんとあるから、遠慮しないで食べてね。』
(遠慮するネコ・・・は、多分いないと思います。)
私たちは、いろんな話をしながら、楽しいディナーを堪能したのです。
もっとも、私は時おり、
『ニャ。』
と相槌をうつしかできませんでしたが・・・。
食べ終わってからは、ベッドの上に移り、話しをしました。
少しして、ヒトミは、押入れの奥から、古ぼけた箱を出してきたのです。
『カズに私の大切なものを見せてあげる。』
そう言って、箱の中身を見せてくれました。
いくつかの写真は、彼女の小さい時の写真でした。
『これがね、私のお父さんとお母さん。私が撮ったんだよ。』
優しそうな若い夫婦が笑顔で写っていました。
『お父さんはね、私がちっちゃい頃に死んじゃったの。おばさんたちは、病気だって言ってたけど、本当はね、お仕事を頑張りすぎて、自殺しちゃったんだって。かわいそうだよね・・・。』
言葉が詰まった彼女を見上げる。
『ハハ。ごめんごめん。えっとねぇ~、これが、私のボーイフレンドよ。』
小学生の男の子が写っており、右上に私には読めませんが、名前らしい文字が書いてありました。
(へ~こいつかぁ・・・。えらくチビじゃん。)
ネコに「チビ」と言われる人も珍しいと思います。
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