【8】生きて。

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私は、あのマンションへと必死で走りました。 最後の角を曲がって、道路を渡ろうとした時です。 左から来た、眩しい光に私は一瞬立ち止まってしまったのです。 『君たちネコってね、車に轢かれそうになった時、固まって動けなくなるんだって。だから、カズは、ここから出ちゃだめだよ。』 ヒトミの声が、頭の中によみがえりました。 (しまったっ!!) 「キキキキーッ!」 「バンッ!!」 とっさに動こうとした時は、もう手遅れでした。 私はその車にはねられ、路上に転がってしまったのです。 暫くは、何が何か分かりませんでした。 (早くしないと・・・ヒトミが・・・ヒトミが・・・) 何とか立ち上がりましたが、体の感覚がなく、思うように歩けませんでした。 そこへ、彼が自転車で帰ってきたのです。 『お、お前・・・カズ・・・か?』 (あれ・・・誰?なんで・・・名前を?) 『カズじゃないか!大変だ!!』 彼は、自転車を投げ出し、私を抱えて、階段を駆け上がりました。 ドアを開ける時、その横に、あの写真で見た文字「和樹」が見えました。 (良かった、辿り着けた・・・。) 『お母さん!お父さん!カズが大変なんだ。助けて!』 私を自分の部屋に運んだ彼は、両親を呼びに行きました。 (ここが、ヒトミの彼の家・・・。) 不思議ともう痛みはありませんでした。 倒れたまま、部屋の中を見渡していた私の目が、ベッドの横の壁で止まりました。 (あ・・・あれは!) それは、ヒトミが書いた私の絵でした。 破かれた絵は、たくさんのテープで丁寧に貼り合わされ、その壁に飾ってあったのです。 (ヒトミ・・・彼はまだ君を・・・忘れていないよ・・・。) 彼が両親を連れて、戻ってきました。 『瞳ちゃんちのネコか?』 『そうだよ、お父さん。車にはねられたみたいなんだ。医者なんだから、助けてあげてよ!』 『どれどれ・・・』
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