【2】ご主人様

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男の子の家は、小さな工場といっしょになっており、お父さんは、そこの社長さんでした。 しょんぼりとしている私を気にしてか、男の子は、色んな食べ物を、次から次へと持ってきました。 無視していた私も、目の前に、高そうなお刺身の盛り合わせが置かれた時には、びっくりしました。 『おい!、それは今夜の晩飯のおかずだ!!それだけは勘弁してくれ。』 そう言って、お父さんが飛んできました。 その後少しして、私が、柔らかく上品に味付けされたカツオの煮付け(高級ネコ缶)を食べていると、お父さんが来ました。 『目の前に見せといて、取り上げるってのは、いい気分じゃないからな。』 そう言って、お刺身を一切れ、置いていきました。 こうして私は、この二人のことが、好きになって行ったのです。 次の朝、「日曜日」という日でした。 私が窓から空を見ていると、男の子がドタドタと走って来たのです。 『ほら、これ!』 一枚の紙が広げられました。 (読めるわけが・・・) 『「レイ」。君の名前だよ。』 説明によると、親子で読んでいる漫画に、出てくる人物の名前だということでした。 なんでも、素手でものを切ることができる超人だとのこと。男の子は、昨夜ベッドの中で、私の名前を考えてくれたのでした。 自慢の爪を見て、思いついた様です。 「レイ」 (はじめてもらった、自分の名前。) 漫画がどうであれ、私は嬉しくてたまりませんでした。 『僕は、峰崎 健次。よろしくね、レイ。』 生まれて初めて、ご主人様に、名前で呼ばれたのでした。
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