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玄関の前で立ち止まる母さん 強ばる顔から、俺にまで緊張が伝わってきた 手を震わせながら、母さんは玄関のドアを開けた 『……もしかして、美幸お嬢様でいらっしゃいますか?』 玄関に入るなり、母さんより少し年上くらいのお手伝いさんと思われる女性が話し掛けてきた 『えぇ……久しぶりね、恵子さん』 そう話し掛ける母さんは、少し気まずそうだが嬉しそうだった 『はい!……立派な母親になられていたんですね』 その女性は幸せそうに、俺たちを見ながら微笑んでいる 『そうね………あの日から、随分経ったものね』 母さんは眉間にしわを寄せながら、苦笑いをしている 『……再開ごっこは、もう十分かしら?』 とっさに声のした方へ、みんなの視線が集中する 母さんの母親だということはすぐに分かった 隅々まで手入れされた身なりからは、気品が溢れ年を感じさせない 俺は幼いながらも、そのオーラに圧倒された…… .
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