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行き先を龍介に任せて着いた店は、見覚えがあるイタリアンのお店だった。 『ここ覚えてる?』 「覚えてるよ……私と龍介と、そして悠司と、三人で食べに来たお店。」 『うん、そうだよ。とりあえず入ろうか』 「……うん。」 龍介が何を考えてここに連れてきたのか。どうして、今になってこんな所に連れてくるのか。 私の頭の中に、様々な疑問と感情が渦巻き葛藤したが、入り口でこうしているわけにもいかないので私は龍介の言う通り、中に入る事にした。 案内されて着いた席は、偶然なのか昔に三人で座った席と同じ場所だった。 私の表情は、どうしても暗いものになる一方だ。 そして、龍介のことだ。 私が何を考えて、何を思っているかは大体検討がついていると思う。 『梨奈ちゃんはさ、どうして彼氏とか作らないの?あれから、もう7年にもなるんだよ。』 あれから、というのは言わずもがな悠司と離婚した日のことだろう。 私は、この7年間、その話題については忘れることにした。忘れることに決めた。 「別に悠司が原因じゃないよ。ただ、そんな機会が無かっただけ。そう、それだけ。」 私は自分に言い聞かせるかのように、強くいい放つ。
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