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ミラーに映る彼女が冷ややかに笑ったのがみえた。もうダメだ…。完全に彼女の勝利だ…。私は人生を諦めた…。
と、彼女がピタリと足を止めた。トンネルを抜けたのだ。彼女はトンネルの出入口付近で物凄い形相で私達の乗る車を睨み立たずんでいた。
助かったのだ。私はその安堵からか、そのまま寝入ってしまった。父に起こされたときは、既に自宅の駐車場で、エンジンも切られていた。
帰宅した時間も遅かったので私はそのまま自室で眠りに着くことにした。
ベッドに潜り込み今日の出来事を思い返していた。
風が強いのか窓がバタンバタン…バタンバタンと音を立てて鳴っていた。
私の部屋には窓が二つあった。でも鳴っているのは私の枕元の窓だけ…。
しかももう一つの窓の外は木すら揺れていない…つまり無風…。
……………………。
途端に体が¨ガタガタ¨となりだし危険信号を発する。居る❗窓の外に居る❗❗余りの恐怖に頭から布団を被りガタガタとなる体を手で抑える。
窓を叩く音はなりやまず益々大きくなっていく…バタンバタン❗❗バタンバタン❗❗バタンバタン❗❗鳴り止まない…私が頑なになればなる程窓を叩く音は激しくなる…❗
どのくらい時間が経ったのだろう。恐怖はピークに達しいつしか怒りに変わって行く…「うるさい❗❗もういい加減にして❗❗」被っていた布団を跳ね除けカーテンを引きちぎらんばかりに開けた。磨りガラスの向こうに映っている影は…やはり彼女だ。あのトンネルの彼女だ。長い髪が宙を舞うように大きく広がって見える。
一瞬たじろいだ…。でも引くわけには行かない❗ここは私と私の家族の家。私が護らなきゃ❗❗そう心に決めて窓に手をかける。相変わらず窓は鳴り続ける。今にも割れそうな程に…。
帰って貰おう…それしかない…。
意を決した私は、窓が外れる位勢いよくバン❗と開けた。そこには彼女がいた。髪を振り乱し大きく見開いた目で私を見下ろすとニヤリッと笑って跡形も無く消えた…。
私はその場に力無くへなへなと座り込んだ。
彼女は一体何が言いたかったんだろう…何がしたかったんだろう…。
真実は未だ闇の中…あの暗く長いトンネルの闇の中…。
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