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「刹那!死なないでね」
「了解」
…私は。このとき、刹那に彼を重ねていたのかもしれない。
何も伝えられずに消えてしまった、私の大事な人。ロックオン・ストラトスに。
私は誰もいなくなった廊下を見つめて、もう1度呟いた。
「死なないで…」
「フェルト?」
「!」
ふいに後ろから名前を呼ばれてふりかえると、そこにはティエリアが立っていた。
「…ティエリア」
「どうした、そんなところで」
何故か恥ずかしくなってちょっと視線を落としてしまう。
「…刹那に」
「刹那?」
変な誤解を招くかもしれない、と思ったけど、私は素直に話した。だって、刹那は私の家族だから。
「死なないでね、って…」
「…そうか」
彼と2人で話したことはあまりないけれど、とても変わったと思う。姿や見た目は何も変わってはいないけど、4年間のうちに中身は変わっていた。昔はあんなに淡白で人間味がなかったのに、今ではこんなに…
「大丈夫だ、刹那は死なない」
「…うん」
「僕は信じている」
こんなにも、人間らしい。人を信じるのは容易いことじゃない。でも彼は、信じると言った。それほどまでに、人を信頼できるようになったんだ。
「…そうだね」
それはとてもすごいことで、嬉しいことで。彼なりに、思うところがあったのかもしれない。
「だから君も信じて待っていろ。僕たちも、生きて帰ってみせる。…きっとロックオンが導いてくれるから」
そのときティエリアが言ったロックオンが、ニール・ディランディのことだってことはすぐに分かった。
ロックオンは…ティエリアを変えた。こんなにティエリアが変わったのは、彼のおかげだから。
「ロックオン…。…そうだよね、きっと…クリスもリヒティもモレノさんも、ロックオンも…私たちのことを見守ってくれてる」
ティエリアが頷く。
「あぁ。だから、きっと大丈夫だ。…君は、このプトレマイオスとヴェーダの所在を頼む」
「了解!」
2人でちょっと笑い合うと、なんだか少し楽になった気がした。
「私も」
数年前、ロックオンに言われた言葉を思い出す。
―フェルト、生き残れよ!
「私も、生き残るよ」
彼と約束したから。手紙にも、ちゃんと書いたから。
「あぁ」
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