15・コンビニ

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名前「高田さん」 透き通る様な金髪。 緑のカラコン。 私の好きな歌手と同じハスキーボイス。 特に買いたい物はないけれど、今日も私はコンビニへ行く。 3ヶ月前の学校帰り、たまたまここに入ったのが始まり。 一目で貴方に恋をした。 チラ見した名札。名字しか分からないけれど頭から名前が響いて離れなかった。 高鳴る心臓を必死に押さえ、私はレジへと向かう。 ヨーグルトと、ロック系の雑誌。 いつも買う組み合わせ。 バンドとかあまり分からないけれど、高田さんが好きそうだなって思って。 「いらっしゃいませ。」 トクン… 恥ずかしくて顔は上げられないけれど、幸せ。 今日高田さん一人なんだ。 いつもいる店長らしき人の姿が見当たらなかった。 ピッ…ピッ… 「…560円になります。」 震える指先で財布を出す。 お釣りが貰える様に、必ず千円札。 少しでも長く高田さんの視界に映りたいから。 「440円のお返しになります。」 レシートに乗せられた小銭を渡される。 触れてしまったら胸の高鳴りが伝わってしまいそう。 チャリン… 財布をしまい、レジ袋に手を伸ばすと――… 「…いつもそれ買ってるよね。好きなの?」 頭上から浴びせられたのは愛しいハスキーボイス。 え…ええっ!? 勢い良く顔を上げると、高田さんの笑顔。 「いつも買ってるから好きなのかなぁって。」 「や、あのっ。ロックとか全然分からないんですけど…いいなぁって…」 きっと、顔真っ赤だ。 「分からないなら教えるよ?」 ――…これは、夢? 何も答えられずに高田さんの顔を見つめていると―… 「…あ、店長。お疲れさまです。」 事務所の扉の開く音が聞こえた。 レジ袋を握りしめる手が汗ばむ。 よし、言うんだ。 「あ、あのっ。来月号も買いに来ます!」 顔も見ずに半ば言い逃げ状態で、出口へ急ぐ。 「ありがとうございましたー」 高田さんの声に、自動ドアの前で顔を上げる。 ウィーン… 開く直前、ドアに反射した高田さんと視線が交わう。 ヤバイ、何それ――…   コンビニ    営業スマイルじゃない笑顔    反則です! .
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