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「好きって言うの…恥ずかしいよな。」
「なに、いきなり。智(トモ)、私に言ったことないくせに。」
「うん、だって…俺…円(マドカ)の事…。」
智は真夏でも冷たいマイペース男。
付き合って3年目。
会話も少なくなったし、隣りにいて…あまり笑顔を見なくなった。
友達との約束、いつも優先したり、デートだってドタキャンばっか。
しかも「眠いから」って。
不安になっていた私に、智は今日珍しく「一緒に帰ろう」って言い出した。
普通なら喜ぶ?
私は、いつもと違う智に不安を感じた。
《別れ話》
されちゃうんじゃないかって思って、ずっと私は下を向いていた。
やっぱり当たりかな?
だって円の事――…何?
その先は聞きたくないな。
「だ、だって…何?」
智は急に立ち止まり、乱暴にポケットに手を突っ込んだ。
「――…てるもん。」
いつもより低い声が、不安を煽る。
え?何?
そばに寄ろうとした私の手を、強く掴んで…航は言う。
素直じゃない君。
いつも私は振り回される。
好きなの?
「好きじゃねーよ。愛してる。」
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