電脳世界

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   ふうと溜め息を吐いて、視界を覆っていた銀色の潜行装置を取り外す少年が一人。  途端に目に入る光に眉を寄せつつ、眼鏡の様なそれを持ったまま固まった筋肉をほぐす為に、ソファーに座ったまま背筋を伸ばす。 「今日はいつもより遅かったじゃねぇか、漣楓(れん)」 「オークションで落としたい物があってさ。それを競ってたら遅くなっちゃって」  背後から掛けられた声に、振り返らず答える。トントンと包丁の奏でる小気味好い音が聞こえる事から察するに、夕食を作っているのだろう。 「ごめんね海翔(かいと)。今晩は俺が作る番だったのに」 「構わねぇよ。明日からの一週間はお前にやらせるだけだからな」 「うげっ……」  会話をしつつも漣楓は、メタリックな輝きを放つ潜行装置をダイニングのテーブルの上に置いて椅子に座る。  そして、ほぼ同時に海翔がキッチンから皿を差し出してきたので、それを受け取ってテーブルに並べていく。対面式のダイニングキッチンだから受け取りもしやすい。 .
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