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翌朝。漣楓はしたたかな目覚ましの音に起こされてた。寝ぼけ眼(まなこ)を擦りつつ時間を確認すると、六時四十五分を差していた。
早い気もしたが朝食を作らなければならないため、スリッパを履いて部屋を出る。
ペタペタと歩く音と小鳥の囀(さえず)りが静かな朝の家に木霊して小気味良い。
食パンをトースターに突っ込みつつ、フライパンにベーコンをのせて卵を割る。
別に食パンはトースターの様なアナログ的な機器に頼らずとも、オーブンレンジのトースト機能を使えば程よく焼ける。しかし海翔が
「場合によって焼け具合が変わるのが良いんじゃねぇか」
と言った事で、この家では古いトースターを使っている。
漣楓も最初は面倒臭がっていたが今では、焼けた時に鳴る音が朝らしくていい、と思っている。
コーヒーメーカーに挽いた豆をセットし、手早くサラダを作る。そうしている間に卵が焼けて朝食の準備がほぼ整う。
とその時、漣楓の頭を謎の強い衝撃が頭を襲った。
「痛っ……」
「目玉焼きに火が入り過ぎだ」
「だからって殴らなくてもいいだろ!」
「手加減してるだろ」
「手加減とかそういう問題じゃなくて殴るなよ。優しさの欠片もない」
「優しさ? 俺は優しいぞ」
「そうでした、分かりました。だからフォークの先を向けないで!」
文句を言おうとしたが、恐ろしい程きれいに微笑んでいる顔を見てしまったら、そんな気も逃げ出してしまった。
そして当の海翔は漣楓に構わず、コーヒーメーカーの前へ行き、自分が飲む分だけのコーヒーをいれている。
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