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食器を自動洗浄機に突っ込んでから、二階の自室へと向かう。
起きた時に開け忘れていたカーテンを開けると、朝の光が視界一杯に広がる。それと同時に見える巨大な木。名前は何だったろう?
夏の暑い日差しを遮ってそびえ立つこの木は、あと数ヶ月もすると赤や黄といった色に変わっていくだろう。
暫く気を眺めた後、背後にあるクローゼットから服を取り出す。ジーンズに青系のTシャツ、とてもシンプルな格好だ。
学校へ行くのに制服を着る人もいるが、そんな物を着る人は滅多にいない。学校も服を指定したりはしないから、各々が好きな格好をして来ている。
パジャマの上を脱いだ時、ふと左腕に視線がいく。そこには肘から手首にかけて、十センチメートル程の傷跡がある。今ではとても薄くなっている傷跡は、小さい頃に遊んでいて切ったと教えられているものだ。
なんでも、走っていたら家のガラスに突っ込んで行ったとか。漣楓はこれを聞いた時、我ながら阿呆らしいと感じていた。
そして、海翔はこの傷跡を見る度に顔をしかめていた。俺がもっとしっかりしていたらな……と哀しそうな顔をする事がある。
最近では殆ど見ないが、初めて見た時は槍が降って来るかと思った漣楓だった。
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