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「なぜですか!!なぜ…なぜ何の罪もない村を軍隊を使ってまで焼き払う必要があるのです!!国王…いぇ、父上!!」
静かな城内に騒然と怒声が響き渡る。
「あの村の者たちが反乱を企てている噂を聞いたのでな。不穏分子は早々に摘まねばなるまい?」
…いつからだろう。
昔の父はもっと穏やかで、何よりも民衆の幸せを願っていた偉大な御方だった。
「父上、貴方は変わってしまわれた。もはや父として…否!!国王としての資格無し!!」
そう言い俺は背中に背負う大刀『神剣バルムンク』を抜き放ち、その銀に輝く鋭い切っ先を父に向ける。
「我に刃を向けるとはな…乱心したかフィンよ。」
父の威圧するかのような鋭いまなざしが俺に向けられた。
まるで鋭利な矢が体を貫通していくかのような錯覚に囚われる。
分かっている、俺の力では強大な父上には到底勝つことなどできはしまい。
それでも。
もう黙っていることなど俺にはできなかった。
民の苦しみが痛かった。
そして何よりも……優しく厳しく、そして偉大な皇帝。そんな父が変わってしまわれたのが辛かった。
「父上、覚悟!!」
「大馬鹿者が。我に背いたこと、冥土で悔いるがいい。」
威厳に満ちた眼光を鋭く光らせ、父も自らの愛剣『魔剣ミストルテイン』を抜いた。
互いの刀身がまるで生きているかのように輝く。
息子を斬ろ、とミストルテインが妖しく光る。
父を止めろ、とバルムンクが煌めきを帯びる。
二本の宝剣が今まさにぶつかり合おうとした、その時だった。
「やめてお兄様!!」
玉座の間の大扉が大きな音を立てて勢いよく開け放たれ、間に割って入ったのは実妹、アイシスだった。
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