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その瞬間、目の前を上方から輝く刃が走った。
ギィィンと甲高い金属音を響かせ、打ち消されるミストルテインの衝撃波。
「むぅっ、何奴だ」
「フィン様、アイシス様、ご無事ですか!?」
危機一発、寸分手前で『天槍グングニル』が俺達を救った。
天窓から槍を放ったのはレイナ=フランシスカ。騎士団長にして俺の腹心。
「大きな爆音が聞こえたので来てみれば…皇帝陛下、何のおつもりでしょうか?」
天窓から軽やかに飛び下りてきたレイナは、ブラッドをキッと強く睨みつけ問いた。
「ふん、反乱分子を消そうとしたまでよ。フランシスカ騎士団長、貴様も我に逆らうか?」
下卑た笑みを浮かべるブラッド。まるでレイナが裏切ることを分かっているかのような口振りだ。
「私はフィン様の腹心。フィン様が皇帝陛下と分かつならば、私はフィン様に従います」
皇帝を睨みつけたままのその瞳は、強い意思の表れ。
決して折れることはないであろうその意思は、俺と共に歩くと主張する。
「レイナ、逃げろ。お前では奴に勝てない」
分かっています。そう言うかのように、レイナはにこりと笑顔を俺に向けた。
「大丈夫ですよ、フィン様。何も策無しに飛び込んできた訳ではありません」
「くくくっ、策だと?どのような策で我を倒そうと言うのだ。浅はかなり、フランシスカ騎士団長」
心底おかしい、まるで馬鹿にするような笑いを上げるブラッド。
そしてミストルテインを上に構え、叫んだ。
「思い知れ、貴様らのような蟻の策など我には通じぬと言うことを!!」
煌めきを帯びた刀身が振り下ろされされる。
瞬間―
「誰も陛下を倒すための策とは言っていません」
レイナが何かを床に強く投げつけた。
それはパンッと音を出して弾け、そして全ての視界を遮る煙幕が辺りを覆った。
「煙幕弾ですね、さすがはレイナさん」
「感心している場合ではありませんアイシス様、さぁ行きましょう」
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