ネットカフェ難民

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アキ【お、きたきた。今日は遅かったね】 モト【家に連れ戻されたかと思った(笑)】 ユウ【ドリンク選んでたら遅くなって。連れ戻されてたまるかってーの!】 一分間に必ず全員が発言するほどの早さで会話が進んでいく。 歳も本名も住んでいるところも性別すらも不明だったが3人は共通の夢があった。 服飾関係の仕事に就くこと。 有羽はデザインをかいて、それを写メしチャットの中で見せるのが日課だった。 ユウ【今日のデザインどう?】 アキ【いいねー色渋くしたらメンズでもイケそう】 モト【うん、さすが。ボタン3つにしたら?】 こんな具合でアドバイスをもらい、手直ししながらチャットしていた。 ♪♪♪ 「電話?」 携帯を取り出すと、知らない電話番号からだった。 チャットをしながら少し不機嫌に出る。 しかし、話をきくうちに心が踊り思わず声が上ずった。 興奮状態で電話を切り、すぐにチャットで報告した。 ユウ【こないだのコンテストで…最優秀とっちゃいました!】 アキもモトも興奮気味でレスしてくれる。 有羽は先日行われたデザインコンテストに応募したのだ。 電話では最優秀に選ばれたので、契約などの申し出があればデザインの仕事ができるかもしれないと言われたのだ。 家族に認めてもらえなくても認めてくれる人がいる。 それだけで有羽はうれしかったのに、チャットで一緒に喜んでくれる2人がいることでもっとうれしかった。
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