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遠足当日のこどものようにぱっちり目が覚めた。
チュンチュンとすずめの声が聞こえてくる。
時計は8時をさしていた。
東京まで新幹線で三時間。
時間がない。
すぐにベッドから飛び起きたが隣にいるはずの翔太はいない。
ベッドのそばのテーブルに目をやると有羽のスケッチブックのあいたページにメッセージがあった。
【がんばれ有羽!!
おめでとう!!
有羽のデザインのファン1号は俺だからな。
いつでも連絡しろよ。
大人になったら迎えにいくから(笑)
翔太】
とマジックで大きく書かれていた。
なんだかうれしくなって静かにスケッチブックをとじ、急いで化粧をはじめた。
そうだ。
アキやモトよりも前にデザインを認めてくれたのは翔太だった。
出会ったクラブでデザインをたまたまかいていたら
「すっげーかっけー!!」
と声をかけてきたのが翔太だった。
はじめは新手のナンパだと思った。
しかし何度遊びに行っても一度も手をだされたこともない。
むしろ今朝のように、翔太の相手もせずパソコンをいじっていても邪魔せずに見守っててくれていた。
地元や実家は大嫌いだったけど、翔太だけは友達と言える存在だった。
そんな翔太の家を飛び出し徒歩10分で新幹線の駅についた。
昨日アキと携帯番号も交換したのでついたら電話することになっていた。
期待に胸を弾ませて夢に一歩近づく。
気分も気候も良好。
夏から秋に変わる風を全身でうけながら駅に向かった。
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