第三章 ―DESTINATION―

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『Al-ko-nostは歌う塔。塔から発信される歌を、端末である函の中の者が受信する。私たちはAl-ko-nostを通して彼等を導く。私たちが描いた物語に沿って……』 「千年の刻を待ち、いざ王国の再建に臨んだものの、函の中に遺された民はカナリアただ一人になっていた」 カナリアは静かに頷く。 『端末の交配は私たちの計算で完璧にコントロールされていた。しかし、ほんの少しのズレが、千年の間に非常に大きくなっていった。完璧なコントロールの下で殖やしたはずの私たちの民は、ただ一人を遺して滅んでしまった。もうこれ以上待つことは出来ないと判断した私たちは、端末の函を開き、おまえたちに向かわせた』 「僕らもあなた達の支配下にあったということですか」 『そう。一切の行動も思考も、お前たちのすべてを操作するのは私たち』 カナリアが口の端を吊り上げる。 微笑みというにはあまりに生命を感じさせない、歪な表情だ。 『喜びも哀しみも、怒りも恨みも、愛も、お前たちはすべてお前たちだけのものだと思っているかもしれない。しかし、それは私たちが与えたものだ。それらの感情はお前たちが自ら産んだものではない。私たちが逐一管理と操作を繰り返した結果だ』
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