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【遙か2】翡幸【BL】
「雅弘」
聞き慣れぬ名前を、翡翠が口にする。
幸鷹は、きょとんとしたような顔で見上げると、
いつものような顔の翡翠が居るだけ。
「誰ですか、それ」
「橘雅弘…それが、私の本当の名前だよ」
天気の話でもするように、翡翠はそういった。
幸鷹は、じっと翡翠を見上げるだけで返事をしない。
「……」
ただ一言だけ…。
「はぁ…そうですか」
たったそれだけ…だった。
それが、幸鷹の反応だ。
翡翠がどれだけ好きだと思っても、
幸鷹は興味を示さない。
「君は、海賊の私は嫌いだろう?」
「…そうですね」
あっさりと肯定する。
「だから、海賊退治のご先祖さまを持つ橘雅弘だったら、
好きになってくれる?」
「……そんな男、私は知りませんから…。
嫌いも好きも…ありません」
「ねぇ、どうしたら、好きになってくれるんだい?」
夢出会った先祖とは違う、相方に対しての恋情に余裕なんてない。
そもそも…慕われているどころか、
嫌われているのだから…。
翡翠の言葉に、幸鷹は表情変えずにこう言った。
「先祖の名を鎧にする知らぬ男よりも、
余裕のない八葉の翡翠殿が好きですよ」
艶美な笑顔で言われてしまうと、
後には引けない。
「あ、そう…」
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