遙かシリーズ

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望美の顔には、 確信を得ている余裕の微笑みが浮かべられている。 「景時さんは、私が身勝手だって言いたいんでしょ? ええ…私は、身勝手なの」 「……」 「だから、貴方に譲くんをあげる」 「……」 「ねぇ、景時さん。 譲くんを私から解放してあげて…」 す…っと、指を引いた。 景時は、それでも喋れない。 驚いて、喉に蓋でもされたかと思うように言葉が出ない。 「譲くんは、確かに私が初恋だよ。 でも、京に来てから確信したの」 「……」 確信を得ていた微笑みは、哀しげな微笑みに変化していく。 「譲くんの気持ちは、星の一族の使命感からも来てるんだって」 譲が聞いていたら、 否定するのではないかと思うような言い草だった。 「いくら、幼馴染で初恋の女の子だからって…。 あの年頃の男の子が、身の回りの世話まで出来ないでしょう?」 「……」 「私が好きだって気持ちがあるから、譲くんは進めないの」 「……」 「だから、お願い…景時さん。 私から、譲くんを奪って」 景時は、望美の言葉に真剣な顔を向けて尋ねた。 「どうして、俺に言うんだい?」 「だって、譲くんが愛してるのは景時さんだもの」 こんどは、可笑しそうに笑う。 この少女は、どれほど笑顔を持っているのだろう。 それ以上に、望美の言葉が景時は信じられなかった。 「譲くんが…俺を?」 「そうだよ。 だから、あげる。奪って、解放してあげて?」 「……」 「でも、奪うからには……」 望美はそっと、景時の目の前に置かれていた五寸釘を手に取る。 ついっと、景時の前に突き出す。 「泣かしたら、許さないわよ」 「……」 まるで、裏切ったら許さない…といわれているようだった。 「君は…何処まで知っているんだ?」
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