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「これからすごいものが見れますよ~」
これから花火があがりますよ~的なノリで軽い声だ。緊張感の欠片もない。ワクワクした様子のクリスは、リリを見ていた。
「…参棺は、お父様のだったのに…。よくも……」
10代とは思えない殺気。
和馬は寒気を抑えられず、自分の腕を抱える。そして、一瞬も見逃すまいとリリを見つめた。
ゆっくりと左手を上げる。その動作は、優美で、まさにダンスを踊るような優雅さで、自然だ。
「零棺!!」
リリの可愛らしい声がビルに反響する。
ドン!!!
先程とは比べものにならないほどの縦揺れ。立っていられない!和馬はなんとかビルの壁にしがみつくが、手にザラザラしたものが付着する。
よく見ると、揺れに耐えきれず、ビルの壁にヒビが走っていた。
……
顔から血の気が引いていくのが分かる。リリは、一体何を呼ぼうとしているんだ?
「来ました!」
クリスが叫ぶ。興奮していた。
この日、一番の揺れがきた。和馬は、体が一瞬無重力に捕われる感覚を味わった。
白い棺。
いや、ただ白いんじゃない。棺に隙がないほど紙が巻き付いているのだ。
和馬の頭に、ある言葉が浮かぶ。
封印。
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