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包帯のように巻き付いた紙には、びっしり文字が書き込まれている。
「出てきなさい」
何かを決意したように、低い声で命ずる。
棺の前に立つ少女は、死神のようだった。
黒い髪をなびかせ、白く清らかな肌は、まるで作り物のようだ。美しいその姿は、死を司る神そのもの。
地面から延びていた紙に火がつく。そして棺にも燃えうつり、2メートル近い炎が上がった。その中から、何かが出てくる。
目を凝らすと、それは人の形をしていた。
「…何だ?あれ……」
ポツリと出た言葉に、隣で腕組みをしていたクリスが答える。
「鬼ですよ」
「…鬼?」
人の形をした鬼は、炎を背景に立っていた。
艶やかな黒い髪が、炎の風にまかれ揺れている。開かれた目は、燃え上がる炎のような、血のような真紅。外見からは、鬼だとは分からない。普通の少年と変わらない。
これが鬼?鬼っていうのは、角とか生えていて獰猛で、人間を食べる、そんなイメージだが、この少年はまるで普通だ。リリと並ぶと、同学年の少年そのものだ。
「あいつを、倒しなさい」
リリは、鬼に一別もくれず、イレイサーを指差す。
鬼がイレイサーを見る。
「……」
イレイサーが、一歩後ろに下がった。
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