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「ジルファード探偵事務所」
――10分。
俺は、勇気を振り絞れずにいた。もう一度携帯を開く。
ちなみにここに来て34回目の意味のない行動だ。
人って、何で意味もないのに携帯をいじるんだろう?などと、全く関係のない疑問が頭に浮かぶ。
「ふぅ…」
ため息一つ。
そろそろ、一歩を踏み出そう。俺は、何のためにここまできたのか?
ジー、ジー
呼び鈴を鳴らす。
このまま、逃げ出したら、ピンポンダッシュか?そういえば、一回もやったことないな~。
子供の頃から、そんなことして何が楽しいんだ?って思ってたからな。俺って、けっこう真面目な子供だったんだな。
また、考えが違う方へ向かっている。さらに幼少時の思い出に浸ろうとする少年の耳に、ガチャという音が聞こえた。
楕円形のステンドガラスがはめこまれている上品で美しい造りのドアが、10センチほど開いている。だが、出迎える人間がそこにいない。
自動ドアか?と、一瞬思いながら、何気無しに開いているドアの隙間を、上から下へと見る。
と、猫のぬいぐるみが、少年を見上げていた。
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