鬼と少女

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どうやら、少年にノックしろと言いたいらしい。 少年は、一つ息を吸ってから扉を叩いた。少しして、中から「どうぞ」と男の声がする。 「失礼します!」 勇気を振り絞り、扉を開けた。 そこには、革張りのソファが向かい合わせに置かれ、真ん中には足にまで丁寧な彫刻が施されている机が、雰囲気をかもしだしながら配置されている。奥には本棚があり、少年には全く意味が分からない本がずらり。壁紙は白一色だ。 そして部屋の左側にある窓枠に持たれいる青年。歳は25~6くらいだろうか。落ち着いた雰囲気に、少しちゃめっけを感じる焦茶色の瞳。ブラウン色のサラサラストレートの髪。色素の薄い肌に、整った顔立ち。 少年の目の前に、貴族の生まれと言われても、ほとんどの人がすんなり信じてしまうだろう青年が微笑をたたえ立っていた。 「いらっしゃいませ、ようこそジルファード探偵事務所へ!」 高級クラブに来たか?と錯覚してしまうほどの見事な営業スマイルを浮かべ、青年は少年に歩み寄る。 「何の御用でしょうか?人探し、物探し、ペット探し。妻・夫の浮気調査から、殺害犯まで見付出しますよ~」
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