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次の日の放課後、義孝が教室に迎えに来た直後、入口付近で黄色い声援が上がった。
まこと君と、アシンメトリーの髪で片側剃りあげてる人と、ごぼうみたいにひょろひょろと背が高い人。
歓声の中心にいるみたい。
あれ、何なの?有名人?
「由紀せんぱーい!義孝せんぱーい!」
背の低いまこと君はぴょんぴょん跳びはねながら私たちに手を振る。
義孝を見ると、顔が赤くなっている。
わかりやすすぎんだっつの。
徐々に人が集まって来て、廊下を塞いでいる。
ここは、まずいか。
「どうしようか、義孝。」
「昨日のファミレスでいいんじゃね?おまえが行くとアレだし、俺がまことに言ってきてやる。」
スルスルと女子の間を抜け、まことの耳元で話し掛ける義孝。
なんて行動力。
その様子をボーッと眺めていると、すぐ後ろの窓を誰かが閉めたので、私は振り返った。
「あ、有志バンドの人達ですよね?アレ。」
「…恭介!」
戸締まりをしていたのは恭介だった。
「サインもらっとこうかなあ。ボーカル誰かな?知ってますか?由紀。」
何であんなことがあったのに、平然としてられるかな…
ちょっとだけ意識してた自分が恥ずかしくなって、油性ペンをきゅぽん、と開ける。
「由紀?」
恭介の腕を掴んで、手の平に「Yuki!」とでっかく書いてやった!
書いてる間抵抗しない恭介も恭介だと思うけどね。
ポカンと見ている恭介の手を、投げ捨てるように離す。
「ボーカルのサイン、欲しかったんでしょ?」
恭介の頭の上にクエスチョンマークが見えたけど、義孝がこっちに向かって歩いて来たのを確認して、私は鞄を持って教室を出た。
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