消えた森

1/2
前へ
/34ページ
次へ

消えた森

皆さん経験があるでしょうか。小さい頃よく木の枝などを持って振り回しては探検ごっこ…何て言う遊び😆 私は普通の女の子と少し違っていたのか昔はよく河原の林に探検に行きました。これはそんなある日の出来事です。 その日はいつもと変わらず穏やかでした。気温も暑くも無く寒くも無く…過ごしやすい日だったと記憶しています。 私はいつもの様に一人河原の林に探検に行くことにしました。いつもと同じ道…いわゆる獣道。私が歩く道はその部分だけ草が生えていない。正しくは、釣人等が通る道なので草が生える暇が無い…そんな道だから迷うわけが無い。しかもほぼ毎日のように来ているから何処に穴があるのか、木の根が出ていて危ない所等熟知しているほど。 けれどその日は違っていた。始めはいつもの慣れた道。少し行くと二股に別れていた。(あれ⁉こんな道あったかなぁ…)疑問に思いながらも何だかワクワクした気持ちが込み上げてきて行ってみる事にしました。進めば進む程林は木々が多くなりいつしか森の様になっていました。足元の道も無くなり膝丈程の草を掻き分けて進んでいく様な状態で、まるで本当に探検隊になったような気分で、怖いとかそういった感情は全くありませんでした。 ふと気がつくと川のせせらぎが聞こえない。近くには大きな橋がかかっていて交通量も多いので引っ切り無しに車の音がしていたはずなのに聞こえない…。全くの静寂…。時々鳥の囀りが聞こえるだけ…。まるで大きな森にポツンと一人取り残された様だった。 この時初めて怖い…と思った。戻らなきゃ…今戻らなきゃ二度と戻れ無くなる…直感が言っていた。後を振り返ると木々が覆い繁りまるで私の帰り道を隠しているように見えた。今掻き分けて来たはずの道も見当たらない。 辺りが段々暗くなってきた。いや正しくは暗闇が音も無く私の周りを取り囲んでいるかの様に見えた。 夕方が無くいきなり夜がやって来る…そんな感じにも似ている。 私は走った。走って走ってとにかく走った。何度か草に足を取られそうになりながらも決して走るのをやめなかった。走るのをやめたら二度と帰れない…そんな気がした。 走りながらこんなに遠くまで来たかな⁉と思った。そんな森の奥まで来たつもりは全く無かった。けれど遠かった。やっとの思いで森を抜けいつもの林の入口に出た。 外は空が赤く染まっていた。もう夕方だった。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加