想い

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突然呼ばれて、クレディアは内心驚きつつ横を見た。椅子に座って目をこすりながらクレディアを見つめる、ラクトゥスがいた。 寝てたのか。そう思うより先に、クレディアは顔を背けた。赤面しながら泣いている今の顔を、見られたくない。 「……どうした?」 尋ねる、というよりは独り言のような口調で、ラクトゥスは聞く。クレディアは答えなかった。 いや、答えられなかったのだ。自分でも、どうしたのかよくわかっていなかったから。 答えがないことに、ラクトゥスは大して頓着していないようだった。椅子から立ち上がると、布団の上に無造作に放置された、薄い空色の衣装を手に取った。 さっと袖を通し、同様に放置されていた帯をきっちり締める。 そして、うつむくクレディアの頭を撫でた。
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