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春賀の宴。 江南から移木させた幾千もの桃の木を離庭にならべ、現皇帝、中宗は酒気に頬を染めている。 おのおの桃の枝を手折り、歌とともに我が妃、偉后(イコウ)に捧げよ。 それが今回の宴の趣向であった。 隆基(リュウキ)は偉后に歌を捧げる気など、さらさらない。 桃の木を手折ることなく、江南の白い花を見上げていた。 薄桃の花弁が春風にくゆる風情、しかし隆基の心情は、まったく別の思いに満たされている。 なんと、無益な。 昨年の飢饉で、百姓は種籾まで食らいつくし、街には流民が溢れているというに。 なにが春賀か。 烈火の激情を深い溜め息にかえて吐き出した。 「、、、何をそんなに思い患っておる?」
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