17人が本棚に入れています
本棚に追加
春賀の宴。
江南から移木させた幾千もの桃の木を離庭にならべ、現皇帝、中宗は酒気に頬を染めている。
おのおの桃の枝を手折り、歌とともに我が妃、偉后(イコウ)に捧げよ。
それが今回の宴の趣向であった。
隆基(リュウキ)は偉后に歌を捧げる気など、さらさらない。
桃の木を手折ることなく、江南の白い花を見上げていた。
薄桃の花弁が春風にくゆる風情、しかし隆基の心情は、まったく別の思いに満たされている。
なんと、無益な。
昨年の飢饉で、百姓は種籾まで食らいつくし、街には流民が溢れているというに。
なにが春賀か。
烈火の激情を深い溜め息にかえて吐き出した。
「、、、何をそんなに思い患っておる?」
最初のコメントを投稿しよう!