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宏人は寝ていた。今は五時限目、現代社会。周りの人もウトウトしている。なのに…。
「コラッ!!奥山!!何度怒られれば気がすむんだ!!廊下にバケツ持って立ってろ!!」
宏人だけが怒られた。
それもそのはず。その言葉を聞いたのは、今日で五回目。つまり、毎時間宏人は寝ているのだ。
廊下に立たされた宏人は、両腕にバケツを持って、頭の上にもバケツを乗せてきちんと立っていた。目をつぶって微動だにしない。声をかけられてもバケツを持つことに集中して(宏人は集中する事が苦手なはずなのだが)、無視しているようだ。終業のチャイムが鳴り響いてもバケツを持っているところを見ると、きちんと反省する気はあるらしい。よく聞いてみると微かに寝息を立てている。…訂正しよう。宏人はきちんと立ったまま寝ていた。毎時間させられ続けた結果バケツを持ったまま寝るという技術を身につけてしまったのだった。
宏人の目が覚めた時には六時限目が終わっていた。
「何で起こしてくれなかったのさ?」
隣の席の春華に向かって少し怒った口調で言った。
「…?気を集中させる修行をしてたんじゃないの?」
「えっ…?気?修行?何を言ってんの?」
宏人は春華の答えに驚き、春華は宏人の答えに驚いた。
(…もしかしてこいつ、自分の事を知らない?ならばなぜ魔法が使える?)
(何?気って何だ?俺集中なんてできないんだけど…。)
お互いに疑問を持ち、その答えを探した。が、確実な事は分からなかった。
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