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「こんにちは」
カナルタはきょとんとして、しばらくして思い出した。
「あ!……あなたは昨日の」
「覚えていらっしゃいましたか。先日はどうもご迷惑をおかけしました」
男は丁寧にお辞儀をする。やはり闇先案内人にいるべき人間には到底見えない。
「おじさんはなぜこんな所にいるんですか?」
「おじさん……ですか」
男は困ったように頬を掻いた。
「せめてお兄さんと言われたいものですね。わたくし、まだ23才ですしね。そ、それでわたくしがここにいる理由なのですが……」
男は上目づかいで辺りを見回した。しかし周りにはカナルタの他には酒を飲んでる男と壁にもたれかかっている女以外は誰もいない。
「わたくし、ここで働いているのですが、仕事がないんです。なので、こうして暇を……」
「え?おじさ、お兄さんはここで働いているんですか?」
「はは。おかしいでしょう。笑っていただいて構いませんよ。ただ、お嬢さんが依頼をわたくしに任せて下さればありがたいのですが」
「はい?」
カナルタは今彼が言った事を完全に理解するのにしばらく時間がかかった。男は気弱に下を見たまま喋らない。
「あたし、依頼をしたわけではなくて出勤してきただけなんですけど」
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