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カナルタの新しいパートナーとなったおじさんはスバックと言う名前らしい。彼自身がそう名乗った。セカンド・ネームは闇先案内人の一員らしく明かさない。
しかし、スバックはとても物腰が柔らかで丁寧な人物だった。特にやる事もないので、クラーの町の外を二人で散歩しながら、カナルタはつくづくそう思った。
「私の事はスバックで構いませんよ。さん付けされるのには慣れてませんしね」
「え?……でもあなたは私をカナルタさんって」
「あ、いいえ。悪気があるわけではないのです。どうかお気になさらずに」
草原を流れる小川の近くで座り込みながらスバックが言った。彼の話し方はとても繊細だった。まるで何かを恐れているかのようにカナルタには受け取れる。
クラーからそんなに遠くないこの小川は幼い頃からのカナルタの憩いの場であった。
「そういえば、カナルタさんはなぜ闇先案内人に?」
スバックは裸足になって小川の中に入っていきながら尋ねた。
「わからないわ。ただ、私には母とも姉とも言えるような人がいてね。その人に育てられたんだ。その人が闇先案内人にいたから私も自然とここにいるわけ」
「それは……いけない事を聞いてしまいましたね。申し訳ありません」
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