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部屋はとても散らかっている。足の踏み場ぐらいは流石にあるが、はっきりした目に、優しい感じの顔立ちからは想像できないぐらい汚い事に変わりはない。
掃除なんてまともにやろうと思った事はないし、だから誰も中に入れなかった。
彼女は家の安心する匂いを感じながらベッドに飛び込んで褐色の長い髪を広げる。
そしてお気に入りである、大きな猿のぬいぐるみを抱きよせる。
毎日そうする度にカナルタは、彼女の5才の誕生日に、マキュアが顔を真っ赤にしながらくれた情景を思い出した。
「あたし……頑張ってみるよ。いつまでもあの人に頼ってばかりじゃ駄目よね」
彼女は猿のぬいぐるみに、そして何より彼女自身に話しかけた。
「きっとマキュア様みたいな立派な人間になってみせるね」
目を閉じれば皆に、そしてマキュアに賛美され、輝いている自分の姿が鮮明に浮かんでくる。
その姿を想像しながら彼女は微笑んで、想像の中の自分に力強く頷いて見せる。
そうしている内に彼女は自分自身の中にある密かな野望に胸を躍らせつつ、眠りへと入っていった。
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