一介の盗賊

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「ふうん……あまり穏やかな依頼、というわけでもないね」 カナルタが夢を貪っている頃、マキュアは大きな旅篭のエントランスのような闇先案内人本部の入口にいた。 ロウソクが夜中にもかかわらず大量につけられていて、不自由がないようにしている。夜中に依頼をしに現れる客も少なくないからだ。 「久しぶりだね、ケルーシ。【疾風刃のマキュア】にそれらしい依頼を見せたのはさ」 カウンターに立っているケルーシと呼ばれた人物……ここの受付であり、実務における責任者、は不気味に笑っている。 「まあ、あいつがいたからな。あいつがいては暗殺も諜報もできまい」 「なめられたもんだ」 マキュアは腰に差してあるナイフを一本掴むと依頼書を壁に突き刺した。 「それで……あいつについてだけど、パートナー探しはあいつに任せておいて。それと、いざという時の世話はあんたに一任しとくさね」 「どうした? 疾風刃のマキュアと言われるような奴が情けない」 ケルーシは壁に突き刺された依頼書を一瞥した。マキュアも鋭い目付きでそれを見る。 「何だか……この依頼はヤバい気がするんだ。【雷蹄のザルニア】ではこの依頼はできない、だからあたいに持ちかけたんだろ?」
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