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「ああ……雷蹄のザルニアがお前に仕事を譲るのは珍しい。この闇先案内人ではお前がくる前まで一番のやり手だった。そして何よりプライドも高いな」
「ただ、いいのかい、ケルーシ? これはクラー騎士団との争いの種になりかねないようだけどさ」
「それは予想しているさ」
ケルーシは紅茶が注がれたカップをマキュアに手渡した。顔にはまだ不気味な笑みが溢れている。
「しかし俺達は影だ。影を斬った所でその斬った本人から影はまた出る。それが闇先案内人ってものさ」
「あんたらしい答えだね」
「時間制限は特にはないが、一人でも生かしてはならないという条件がある」
「もう見た」
「そう焦るな。ただ、お前も変わったな」
ケルーシは好奇心に満ちた目でマキュアを見た。
「なぜだ?」
「前はそう言われたら断っていただろうな」
「そ、それは……」
「まあいい。とにかく私は貴様に依頼を果たしてもらえばいいだけだからな」
「ふん。あんたは全く変わってないな。それは自信を持って言えるよ」
上手く切り返したマキュアにケルーシは満足げに微笑んだ。
「まあな」
しかしマキュアはその後紅茶に映った自分の顔を見つめたまま言葉を失っていた。
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