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すると、耳を攻めていたクリスの忍び笑いが、聞こえてきた。
クリスの掌は一夜の身体をなぞる様に、優しく触れてくる。
そのもどかしさに、一夜は息をつめる。
「はじめから、大人しくしてればいいものを・・・・」
笑いを含んだ声に、一夜は最後の抵抗を試みた。
「あ・・・んったが・・・っ」
「私はいつでも欲望に忠実だ」
低い声が耳をくすぐり、そのままベロリと舌が入ってきた。
ぞくりとするその感触に、一夜は身をすくませる。
全身を赤く染め、自分の手で翻弄される一夜を見つめて、クリスは胸を撫で下ろす。
先ほどまで、彼を取り巻いていた闇は見る影もない。
時々彼が、大きな闇に包まれていることは気付いていた。
幸せの向こう側に、常に不幸が付きまとっていた彼にしてみれば、自己防衛の一環かもしれない。
自然と身についた、悲しい性を少しでも、やわらげられるよう。
汗に濡れて、吸いつく肌に口付けを落とす。
前の行為でついた赤い印を追うように。
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