衣野 慎吾

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  その日の夕食時、2階から1階に降りてリビングに入ると既にパパが仕事から帰宅していた。 「あ、パパお帰りー!」 「ただいまー」 パパはスーツの上着を脱いでソファーに置き、ダイニングに移動してダイニングテーブルで真っ先にビールを飲み始める。 ママは作ったばかりの食事をテーブルに並べていて、あたしもダイニングテーブルの定位置に着席した。 「ただいまー」 そこへ、部活を終えて帰宅した“王子様”がジャージ姿のまま勢い良くリビングに入って来る。 「あー腹減ったー!」 “王子様”は定位置のあたしの左隣の椅子にドカッと座り、制服が入ったスポーツバッグと通学鞄を足元にドサッと置く。 そして靴下を脱いでポイッと床に放った。 「慎吾、先に着替えて手洗いなさいっていつも言ってるでしょ」 「腹減っててそんな元気ねーよー」 「おい、慎吾」 「はい分かりました!」 強面(こわもて)のパパに凄まれたお兄ちゃんは直ぐさま立ち上がり、荷物を持って2階の自分の部屋へ着替えに行く。 床に放った靴下はそのまま。 これが“爽やか王子の衣野先輩”の正体だ。
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