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「何すんだよてめー!兄貴殴るか普通!? マジ痛ってえ!」
赤くなった左頬を左手で摩りながらあたしを睨む“王子様”は微かに涙目。
「殴られたくなかったらさっさと出てけや変態野郎!」
「痛って!」
あたしは“王子様”の尻を蹴り飛ばして洗面所から閉め出した。
「けっ!生意気に色気付いてんじゃねーよペチャパイ!」
ドアの向こうで馬鹿犬が遠吠えする中、あたしは苛々しながら残りの服を脱いでバスルームに入った。
あたしのバスタイムなのに割り込もうとして、脱衣中に乱入しといて謝りもしないで、まだ中1のバストサイズを馬鹿にして笑って、ほんっと有り得ない。
あれのどこが爽やかな王子様だよ。
全身を洗い終えると乳白色の入浴剤が蕩けるバスタブにゆっくり浸かって、苛々を落ち着かせる為に目を瞑った。
『彩芽に触んな!』
いつの頃かの記憶が頭に浮かぶ。
お兄ちゃんが助けに来てくれた時の、遠い記憶。
あの頃のお兄ちゃんは今では見る影も無いし、やっぱりあれは夢だったのかも。
あー、超ムカつく。
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